LTE-MとNB-IoT:違いを理解するためのガイド
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーで取り上げられているトピック:
- LTE-MとNB-IoTとは何か?
- 低電力IoTアプリケーションに最適な選択肢はどちらか?
- 長期的成功に向けた、各技術の相対的メリットと制約とは?
- グローバルな可用性および将来性
- 国際的企業はコネクティビティ導入製品における2G/3Gから新技術への移行において、何を考慮し、どう行動すべきか?
- おすすめの選択肢
- Telenor Connexionによる将来展望
プレビュー
モバイル(セルラー)テクノロジーをベースとする2つの新たなネットワークテクノロジー、LTE-MとNB-IoTが市場に参入しています。どちらも、グローバルIoT接続の実現を目的として生み出されたものです。
LPWAN(低電力ワイドエリアネットワーク)の活用を検討している業界にとって、LTE-MとNB-IoTはどちらも優れた接続方式です。いずれもデバイスのバッテリー寿命を延ばし、以前はアクセスが困難だったデバイスへのコネクティビティ導入を実現します。両者ともすでに利用可能な形で標準化されており、4Gネットワーク上に構築されています。つまり将来性があり、グローバルなネットワークカバレッジを備え、GSMAと通信規格によるバックアップも存在します。
はじめに
コネクティビティは製品設計と運用パフォーマンスに大きく影響するため、接続技術をどうするかはプロジェクトの早い段階で検討する必要があります。しかし、通信技術と市場の急速な変化を考慮すると、これは難しい選択です。5Gテクノロジーの到来が目前に迫る中、2Gや3Gのネットワークは段階的に廃止されつつあります。そしてLPWANをサポートする新たなネットワークテクノロジーは、「モバイルIoT」と呼ばれるLTE-MとNB-IoTの2つの技術が世界的に利用され始めています。
複数のネットワーク技術が、モノにコネクティビティを導入するという特定のニーズに応えるために開発されるのは初めてのことです。従来であれば、コネクティビティを導入したユニットは、消費者向けに開発されたインフラを利用して通信してきました。
LTE-MとNB-IoTは認可を受けた電波を使用します。標準化され、安全性が高く、オペレーターによって管理されています。さらに、低コスト、低データレートであり、長いバッテリー寿命を前提として、接続確保が難しい場合も多いIoT使用向けに設計されています。
LTE-MとNB-IoTはどちらもライフサイクルが長いデバイスを使用する業界において、バッテリー寿命の長時間化とカバレッジ拡大の視点から2Gや3Gの代替品を探してきた顧客にとって、魅力的な選択肢です。
どちらのテクノロジーも、平均寿命が10年以上の設置使用に適していますが、両者では得意なIoT使用場面が異なります。
では、皆さまの使用状況に最適なのは、どちらでしょうか?
このガイドでは、企業が長期的な成功に向けて正しい選択を行うために、各テクノロジーの相対的な利点と制約についてご説明します。
文中の専門用語および略語の意味は、このホワイトペーパーの最後に記載されています。
モバイル接続:産業価値の進化
では最初に、モバイル接続技術の開発史について簡単にご説明します。モバイル接続は人間同士の通信からテレメトリーへ、そしてマシンツーマシン(M2M)を経てモノのインターネットへと進化しました。
- モバイル接続の最初のバージョン(1G)はワイヤレス音声通話を導入。
- 2GでローミングとSMSメッセージングを導入し、後にデータ通信用GPRSの導入によってさらに進化。SMSメッセージングとGPRSは、簡易なテレメトリーに広く使用された。ローミングの導入により、モバイルテクノロジーは国境を越えた展開が可能となった。Telenorは、早くも1990年代にM2M通信において2Gによるモノのインターネットを実現した最初の事業者の1つ。
- 3Gはグローバルスタンダードとなり、競合する最先端テクノロジーも統合。3Gは主に高速データ処理を中心に進化。
- 4Gでは、インターネットに常時接続している機器用のLTE技術を導入。 4Gは帯域幅と速度に関する消費者ニーズに応え、2G音声に代わる新しい音声処理方式を採用。
- LTE-MおよびNB-IoT(モバイルIoT)は、モノのインターネットを想定して設計。LTE-MおよびNB-IoTは、長いバッテリー寿命を必要とし、受信困難なエリアでも良好なネットワークアクセスを必要とするデバイスをサポート。
- 5Gは既存の4G LTEと新たな5G New Radio(5G NR)テクノロジーを組み合わせて使用。 4Gと5Gは共存するように設計されており、LTE-MやNB-IoTを含む4G向けのアプリケーションは、非常に長い寿命を期待できる。現在の5Gネットワークの多くは、実際は4G LTEを使用。
- 5Gは拡張モバイルブロードバンド、クリティカル通信、モバイルIoTの3分野向けに4Gを強化。
- 拡張モバイルブロードバンドの対象は、帯域幅へのニーズが高まる一方の消費者。 また、ストリーミングビデオなど、大量のデータを使用する新たなIoTへの使用も可能。
- クリティカル通信には、より迅速な対応とサービス品質、セキュリティの向上が必要。そのため、5Gにはより高い周波数を使用する5G New Radio Technologyを導入。
- モバイルIoT(LTE-MおよびNB-IoT)は5G NRテクノロジーとの上位互換性あり。つまり、LTE-MおよびNB-IoTテクノロジーは、5Gのライフサイクルを通じて使用可能。
LTE-MとNB-IoTテクノロジーの共通点:バッテリーの長寿命化、カバレッジの拡大、ハードウェアの簡素化
LTE-MとNB-IoTはどちらも長時間のバッテリー寿命が必要なIoTデバイスをサポートするために設計され、通常の4Gテクノロジーでは通信困難な場所(建物の奥など)で使用されます。では具体的にどのような点で従来の技術と異なり、どのような影響を市場に与えるのでしょうか?
バッテリー寿命とカバレッジの改善
バッテリー寿命を延ばす方法としては、デバイスのスリープモードへの移行やネットワークへの接続回数の減少により、デバイスとネットワーク間の通信量を削減することがあります。LTE-MとNB-IoTはどちらも建物の奥や遠隔地において、4Gよりも優れたカバレッジを提供します。ただし、バッテリー寿命、カバレッジ、レスポンスの間にはトレードオフ関係があります。この関係性を上手に活用するには、ネットワーク内の新機能(PSMやeDRXなど)を利用する必要があります。
高速レスポンスが必要な使用状況は、バッテリーの節約やカバレッジの拡大にはあまり適していません。あるいは10年間のライフサイクルが必要なデバイスの場合、カバレッジが良好なエリアに配置する必要があります。バランスのとれた運用には、バッテリー節約とカバレッジ拡大の調和が大切です。そしてスリープモードとリピーティングを適切に活用することで、バッテリー寿命とカバレッジを大幅に改善できます。
登場が見込まれる新たな価格モデル
LTE-MおよびNB-IoTの料金モデルは、IoTコネクティビティに含まれるトラフィックプロファイルが異なるため、従来の通信料金とは異なる可能性があります。LTE-MおよびNB-IoTによって接続されるデバイス数は膨大になりますが、送信されるデータ量は少なくなるためです。そこでネットワークプロバイダーでは、デバイスあたりのデータ消費量ではなく、LTE-MとNB-IoTのデバイスごとにアクセス料金を算出する方法を検討しています。
ハードウェアの簡素化
LTE-MとNB-IoTはどちらも4Gの簡易版を使用しており、大規模な稼働が始まった際、ハードウェアの簡易化とコスト削減が可能になります。
GSMAのウェブサイト(https://www.gsma.com/iot/mobile-iot-modules/)には、市販されているモジュールのリストが掲載されています。これを見ると、モジュール市場に3つのカテゴリーがあることが分かります。LTE-MモジュールとNB-IoTモジュール、そして両方に対応するデュアルモジュールです。
LTE-MとNB-IoT:グローバルな可用性と展望
すべての国におけるローカル可用性の実現に向けて
デバイスのグローバル展開を目指す際には、テクノロジーのライフサイクルを考慮する必要があります。
グローバル展開にはグローバルな可用性が必要です。しかし、新たなテクノロジーは通常、都市部においてのみ、もしくは国単位で展開されます。では、LTE-MとNB-IoTのグローバルな可用性は、いつ実現するのでしょうか?
現在、LTE-MおよびNB-IoTはすでにローカルで利用可能となり、グローバルな利用が次の目標となっています。
ある地域の特定事業者がLTE-MもしくはNB-IoTのどちらか一方を採用し、その後、同じ地域内の競合他社がもう一方を選択することもよくあります。
今後数年間で、すべての国においてLTE-MとNB-IoTのローカル利用が可能になることが予想されます。
国ごとの運用から出発するのも手ですが、もし、1回の契約と1つの窓口だけでデバイスのグローバル運用を実現したいのであれば、事業者間のグローバルローミング契約を利用する必要があります。
現在は4Gが広く利用されていますが、5Gの到来が近づいているため、2Gと3Gは徐々に廃止されつつあります。
そんな2Gは現在でもIoTに広く使われています。2Gの音声技術が使われている分野の1つが、eCallの緊急通話。これはEU内の各国において、事故に遭遇したドライバーに迅速な支援を提供するEUの取り組みです。
eCallは2018年4月以降にEU内で販売されるすべての新型認定車両で必須となりました。2Gの音声通話を義務付けるシステムのため、EUの事業者は2Gを廃止できないのです。
そのため2025年までの間、ヨーロッパの大半の事業者が2Gをサポートすることが予想されています。北米では2Gはあまり利用されず、アジア太平洋地域の一部ではすでに2Gが段階的に廃止されつつあります。
LTE-MとNB-IoTは、LTE-Mが先行する形で世界中での利用が可能になりつつあります。 LTE-MとNB-IoTは、5Gのライフサイクル全体にわたって利用できることが予想されています。