このホワイトペーパーでは、AstrataがTelenor Connexionのサポートを得て、どのようにLCVフリート用の新しいプラットフォームであるVanLincを迅速に展開できたかを紹介します。
Astrata Europeは現在、ヨーロッパの1,500社を超える輸送・物流企業に高度な車両管理機能を搭載したソリューションとソフトウェアを提供しています。同ソリューションのユーザーには、DHL、TNT Express、Tesco、Linde、Shellなどの業界リーダーが含まれています。
ヨーロッパではLCV(Light Commercial Vehicle=小型商用車)市場が急成長を遂げていますが、既存の輸送管理システムもサプライチェーンも、その状況に対処しきれずにいました。そこでAstrataは輸送業者のニーズに対応するため、より現代的なソリューションの開発を決意しました。
Astrataは、Telenor Connexionからの必要なサポートを得て、LCV車両専用に設計された新プラットフォーム、VanLincを迅速に展開することに成功しました。このソリューションは使い勝手が良く、また、ドライバーや車両、その他の資産に関する情報をリアルタイムで把握できます。その結果、ビジネスの生産性が高まり、国際的な受注キャパシティを拡大することができました。
ヨーロッパでのLCV人気は、タイムリーな配送を必要とするeコマースの台頭や自動車のシェアリングサービスの人気など、市場におけるいくつかの要因によって後押しされてきました。また、規制強化も推進の原動力となりました。輸送事業者は厳しくなった排出基準に対処するために、より軽量の車両に目を向けるようになったからです。
そんな中、既存の輸送管理システムとサプライチェーンソリューションでは、現代の企業ニーズに対応しきれないことにAstrataは気づきました。
ヨーロッパでのバン人気の急速な高まりを背景として、市場の変化に対応するため、LCV市場をターゲットとした製品開発を決意したのです。
Astrataが協力パートナーに選んだのは、Telenor Connexion。独自のソフトウェアとハードウェア技術を導入したLCVフリート専用のVanLincを迅速に展開するため、必要なサポートと技術を手に入れました。
VanLincは車両のパフォーマンスを監視するだけでなく、GPSを利用してフリートの全車両の位置をリアルタイムで表示します。
車両から送信されたデータはVanLincの分析を経て、ルート、ドライバーの行動、人員配置などの最適化に利用されます。
その際、車両から吸い上げるデータについては、機密性の高いプライベートデータゆえに安全なVPN経由で送ることを望む事業者もいれば、データを暗号化してからオープンネットワーク経由で送信することを望む事業者もいます。
この要件を満たすため、Astrataの新ソリューションは分割データルーティングを可能にするデュアルAPN SIMカードを利用しています。
規制が厳しいトラック輸送業界では、主にコネクティビティ導入により運用コストを削減し、規制をクリアすることに注力しています。一方、LCV輸送業界の規制は緩いものの、また別の課題に直面しています。
バンのハンドルを握る人たちは、プロのドライバーでない可能性があるためです。彼らは普段は技術職や職人と呼ばれている人たちで、訓練を受けたプロのドライバーほど安全に、もしくは効率よく運転できない可能性があるのです。そこで、これらのモバイルワーカーを監視することで効率を改善する、つまり同じ時間内により多くの業務をこなせるようにすることが重要になります。
この監視システムにより、マネージャーは各ワーカーがどこにいるかを把握し、臨時・緊急の作業が発生した際には、近くにいるワーカーを手配することができます。
さらに、企業側は各ワーカーの追跡によって経営管理を強化し、単独労働者保護規制へのコンプライアンスを守ることができます。
AstrataのLCVフリート管理システムでは、VanLincを利用して全車両を監視できることに加え、ドライバーと車両のパフォーマンスを分析し、経営に生かすことができます。
さらに重要なポイントとして、VanLincは他の運用ソフトやシステムともシームレスに統合できるため、フリート管理と人事・給与システムを連動させることが可能です。つまり、労働時間と残業手当の管理を自動化できるのです。
バンとトラック、いずれの輸送業界でもドライバーのトレーニングや燃費、車両・積荷の追跡などについては同様の課題を抱えていますが、VanLincはさらに、サービス面も重視しています。つまり、VanLincには下請け業者の管理、KPI分析、タスク管理など、幅広い機能が用意されているのです。
私たちが目指すのは、お客さまの付加価値を高め、同時にコストを削減することです。トラック輸送市場ではコスト削減が重視されていますが、バン輸送市場では労働効率を高め、同一時間内により多くの業務をこなすことが重視されます。 Astrata サプライチェーン・マネージャー Peter De Bruijn氏
実際のVanLincオペレーティングシステムは、顧客の各車両にインストールされます。このシステムには、車両に搭載されているすべてのテレマティクスセンサーからのデータが入力されています。またVanLincシステムには、システムがモバイルネットワークを利用するための接続デバイスとSIMカードが搭載されています。
一部の運送業者では、機密性の高いプライベートデータを安全なVPN経由で送信する必要がありますが、通信前にデータを暗号化してオープンネットワーク経由で送信することを望む事業者もいます。
この異なるニーズに対応するため、Astrataでは2つの通信プラットフォームを提供しています。1つは公衆インターネット(GLSi)を介しての暗号化による通信であり、もう1つは安全なVPN(FleetVisor)を介しての通信です。そのため、接続を確保する際、Astrataでは単一のSIMカードで2つのアクセスポイント名(APN)を利用できるようにしました。
2010年以来、Astrataでは既存のさまざまなフリート管理製品において、Telenor Connexionのコネクティビティ代行サービスを利用してきました。VanLincを開発する際には、AstrataからTelenor Connexionに打診し、Telenor Connexionが新たな速度要件に対応したコネクティビティを提供しました。
各バンにインストールされているオンボード型のVanLincコンピューターハードウェアは、モバイルIoT SIMテクノロジーを介してクラウドに接続しています。
Telenor ConnexionのGlobal IoT SIMにより、顧客は2つのAPNから選択できるため、Astrataのサービスを簡単に利用できます。Telenor Connexionのグローバル接続ソリューションのおかげで、AstrataはVanLincハードウェアの在庫管理ユニット(SKU)が1つで済むのです。
Astrataの顧客は、車両のコネクティビティとしてプライベートネットワークを選択する場合もあれば、オープンインターネットを選択する場合もあります。この要件を満たすため、Astrataでは分割データルーティングを可能にするデュアルAPN SIMカードを必要としたのです。
VanLincは人事、ERP(Enterprise Resource Planning)、輸送、倉庫など、ビジネスにおけるさまざまな業務システムにシームレスに接続できます。さらに、このソリューションは輸送中の温度を維持する冷凍システムと統合することも可能です 。
Telenor Connexionとの提携により、Astrataは新プラットフォームを迅速に展開するためのサポートと技術を獲得しました。2枚のSIMに対応した在庫管理ユニット(SKU)を手に入れたAstrataは、世界中の顧客に対し、VanLincプラットフォームを提供できるようになったのです。
コネクティビティ導入には3カ月とかからず、2018年初めにサービスが開始されました。LCV市場はAstrataにとって新たな挑戦でしたが、VanLincが売上と収益にプラスの影響を与えることが予想されています。
Astrataでは今後、商用車用ソフトウェアに加えて、輸送、物流、サプライチェーン、モバイルワーカーなど、さらに幅広い分野を視野に入れたコネクティビティ導入製品の開発を予定しています。
Telenor Connexionは、世界の主要モバイル事業者の1つであるTelenorグループに属するIoT専門会社です。Telenor Connexionは同分野における20年の実績に基づき、コネクティビティ導入フリートを大規模展開する顧客およびサードパーティのサービス会社に対し、グローバルIoTコネクティビティとクラウドサービスを提供しています。
Telenor Connexionでは1990年代以降、各国の先駆的な商用車OEM企業およびフリート管理サービス会社との協力により、輸送チェーン全体のリスクとコストを削減するソリューションを提供してきました。
Telenor Connexionは複雑なグローバルソリューションに関する豊富な実績を誇り、遠隔地においても国境をまたぐ輸送においても、シームレスな接続を輸送業界に提供しています。私たちのエンドツーエンドソリューションを導入することにより、サポートと請求、グローバルなスケーラビリティ、および開発と保守の簡便化をワンストップで手に入れることができます。
Telenor Connexionはボルボ、スカニア、日立建機、Verisure Securitas Direct、Kamstrupなどのグローバル企業を顧客として、180を超える国々で1,000万台以上のコネクティビティ導入機器を管理しています。スウェーデンに本社と技術センターを置き、イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリア、南アフリカ、シンガポール、韓国、中国、マレーシア、日本に営業拠点を展開しています。