「IoTをめぐる未来予測2020」の概要
2019年の予測検証とこれまでの進捗状況
前回のレポートでは、2019年以降のIoTによるコネクテッドエコノミーについて、5つの予測を行いました。これらの予測は、今日でも非常に妥当性が高いものだと思われます。1つ目の傾向は、企業データがデータ取引で主導権を握ることでした。IoTを導入した「モノ」から収集した大量のデータについて、多くの企業は第三者へのデータ販売による収益化を模索しています。
私たちは、エンタープライズIoTのデータ(機械やセンサーなどからのデータ)が、大規模なデータ取引で注目を集めると予測しました。その理由は、カスタマーIoT のデータと比較して、保護規制が緩いためです。
2つ目の傾向として強調されたのは、デジタル化による価値創出の迅速化です。デジタル化ブームの初期に参入した企業が利益を確保する一方で、技術面については、複雑なシステムを自社で構築してきました。それに対し、デジタル化への新規参入者は、先行各社が体験した煩雑な作業を「スキップ」し、IoTソリューションをより高速かつ低コストで開発・展開するだろうと私たちは予測しました。
3つ目は、コネクティビティがデジタル製品のイノベーションの中心になるということです。高性能の接続ソリューションは製品パフォーマンスの決め手であり、デジタル化への鍵となります。それにも関わらず、コネクティビティの問題が後回しになっているケースが少なくありません。デジタル化された新製品・サービスを実現するために、企業は開発当初から接続技術を考慮するようになる、と私たちは予測しました。
2019年に確認された4つ目の傾向は、コネクティビティがeコマースをさらに推進するというものでした。現在、物流業界はeコマースの成長により急速な変貌を遂げています。スマートロジスティクスは、すべての関係者(サプライヤー、運送業者、倉庫など)を結びつけるコネクティビティを軸として、高額品の扱いや大規模化により事業規模を拡大しています。このようにAI、ロボット工学、センサーなどとの組み合わせによって、接続技術が物流革新の主な原動力になると私たちは予測しました。
5つ目の傾向は、コネクティビティ代行業務の重要性がさらに高まるというものでした。コンシューマーIoT 分野であってもエンタープライズIoT 分野であっても、特に製品・サービスが価格に敏感なセグメントを対象としている場合、接続技術としてWi-Fiが広く採用されています。ただし、これがスマートロックやSLA(ビデオ監視セキュリティサービスなど)の話になると、製品の信頼性と安全性をさらに高める作業が必要になります。そのような使用場面が増えると、ソリューションの技術的・商業的メリットの面で、コネクティビティ代行(携帯電話またはWi-Fiによるもの)が有利になります。そのため、現在ではこちらが主要な選択肢になりつつあります。
2020年代の始まりとなる今回の予測レポートでは、今後数年間に関する予測をもう1つ追加します。私たちはIoTが気候変動に対して重要な役割を果たすことを予測します。IoTはコネクテッドエコノミーを促進するだけでなく、持続可能で責任のあるコネクテッドエコノミーを実現する上で、さらに重要な役割を果たすことになるでしょう。
気候変動・地球温暖化との戦いの鍵を握るIoT
企業では社会と顧客、および規制当局からの圧力の高まりを受けて、環境への影響を減らしながら利益を確保するための方法を模索しています。しかし、利益確保と環境への配慮の2つの目的は、必ずしも矛盾していません。このレポートでは、これらの目標に影響を与えるさまざまな要因を探り、IoTが果たすべき役割を明らかにしています。
企業がその取り組みの一環としてIoTソリューションのデジタル化と実装に乗り出したことにより、製品の製造と輸送、サプライチェーン、さらにはメンテナンスにおいてまで、効率向上とコスト削減が大きく進展しました。このうちコスト削減の効果については、多くの場合、電気や燃料のほか、水、綿、鉄、木材などに至るまで、さまざまな生産材料の使用を最適化したことによるものです。